(1)カオグロガビチョウの侵入ガビチョウは日本の野鳥ではなく帰化鳥の一種です。浅川流域では丘陵地を中心に96年(平成8年)4月頃から急激に観察されるようになりました。浅川流域ではその前にカオグロガビチョウの侵入の歴史があります。カオグロガビチョウは「平地の低木や竹薮等にいて、姿は見えなくても鳴き声が今まで聞いたことがない、非常に賑やかななき方をする鳥で、1980年代から東京の多摩地方で観察されていました。しかし、それ以降は浅川流域では観察例はありません。代わってガビチョウが侵入してきました。
(2)1996年、丘陵地に突如出現
ガビチョウはツグミ大の大きさで、眼の周りから眉毛のように伸びる白いくまとりが目立つ鳥です。雑木林の薮の中や見通しの悪い林の中のような所が好きで、独特の大きなけたたましい声で良く鳴くので直ぐ分かります。留鳥で1年中います。
浅川流域(一部多摩川流域等を含む)への侵入状況は、八王子カワセミ会会員の観察事例で整理してみると94年に1例、95年に2例の報告がありますが、96年に45事例と突如増え、98年にさらに110事例と2倍以上に増加しました。99年は98年よりさらに分布を拡大したことが明瞭に分かります。
注)1メッシュは2万5千分の1地形図を縦・横それぞれ10等分して得られる大きさの単位で東西方向、南北方向とも概ね1キロメートルの範囲をもっています。
(3)増え続けるガビチョウ
次に数の季節変化、年次経過を図にまとめたのが次図「高尾山」及び「天合峰」です。ともに1996年から4年間、毎月1回の定期カウント調査結果をまとめたものです。高尾山は「小仏川(上椚田橋→蛇滝入り口)→蛇滝登山道→4号路→5号路→1号路」のルートで八王子カワセミ会が実施したもの、天合峰は「沖の谷戸→松木入→尾根道→紙屋入」のルートで天合峰野鳥調査グループが実施したものです。冬に数が減るのは冬はあまり鳴かないので、目立たなくなるためであって、どこか他の地方へ移動するのではないと思われます。実際に真冬でも夏ほど大きな声ではないが、鳴いていることが観察されますし、数羽の群で繁みの中の地上で落ち葉を盛んにひっくり返しへ餌を探しているところが目撃されています。
(4)在来種への影響とソウシチョウの侵入
ガビチョウは手入れの行き届かない雑木林や山林のブッシュを好むように見えます。大きな鳴き声を出す割には警戒心が強く、人の前に姿をなかなかみせません。今、浅川流域の丘陵や山地は里山における農業や山地の林業の衰退で手入れがされていないため、ガビチョウの天国のようになっています。このような所では、冬はシロハラ、アカハラ、トラツグミ等が、夏はクロツグミ等が餌場にしています。在来種への影響が心配されます。
また、96年からこれも外国からの帰化種であるソウシチョウが浅川流域に侵入してきています。今のところ、ガビチョウ程の勢いでは増えていませんが、この鳥の動向も今後気になるところです。
(データの閲覧)
この報告は抜粋であり、詳しいデータをご希望の方は<kk-kasuya@m04.htmnet.ne.jp>にご連絡下さい。